ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)とビスフェノールA(BPA)を交互共重合させて、高分子量エポキシ重合体を合成します。到達する分子量は合成時の溶媒に左右されると考えました。...
エポキシ樹脂フィルの合成原料として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)のn=0と二官能フェノール類を選びました。二官能フェノール類としては、まずはDGEBAの原料でもあるビスフェノールA(BPA)を選びます。 これらの原料を交互共重合させて、フィルム化が可能な分子量100,000~1,000,000にするために必要な原料の純度を推定してみます。
ビスフェノールA(BPA)を原料とした汎用エポキシ樹脂の製造法については、2019/05/14のブログ「エポキシ樹脂-汎用エポキシ樹脂の製造法」で紹介しました。一段法(one step process: taffy process)は BPAとエピクロロヒドリンを交互共重合させます。二段法(two step process: advanced...
三次元架橋したエポキシ樹脂フィルムを作るためには、まず熱可塑性の直鎖状高分子量エポキシ重合体を作り、それでフィルムを作ります。フィルムになる熱可塑性樹脂の分子量は100,000-1,000,000です。汎用エポキシ樹脂のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)の最も分子量の低いn=0の分子を、これと同じぐらいの分子量の硬化剤で交互共重合させた場合、繰り返し単位は200-2,000になります。これだけの数の重合反応を、末端のエポキシ基と硬化剤の末端基の間だけで繰り返す必要があります。 ここで課題になるのは、末端ではなく繰り返し単位中に存在する第二級のアルコール性水酸基です。これが末端のエポキシ基と反応すると枝分かれが起きます。この枝分かれが頻繁に起きると架橋する場合があります。その結果、反応溶液中でゲル化して析出します。これではフィルムはできません。 ですから、エポキシ樹脂でフィルムを作るためには、末端のエポキシ基を硬化剤の末端の官能基とだけ反応させ、重合したエポキシ樹脂の繰り返し単位に存在する第二級のアルコール性水酸基とは反応させない合成条件(重合条件)を見つけることが課題になります。そのためには、硬化剤の種類、溶媒の種類と濃度、触媒の種類と量、反応温度などを詳細に検討しなければなりません。 まずは硬化剤の種類です。 2019/07/07のブログ「エポキシ樹脂の硬化剤-エポキシ樹脂の特殊性」でご紹介したように、エポキシ樹脂は硬化剤の種類によって生成する構造が異なります。硬化剤にアミン類を用いればポリヒドロキシアミン、フェノール類を用いればポリヒドロキシエーテル、酸無水物を用いればポリエステル、硬化剤を使わずに自己重合させればポリエーテルになります。これらの生成した重合体の中で、どれが直鎖状に高分子量化していくか考えます。
エポキシ樹脂(EP)でフィルムが作れると、いろいろな製品ができます。でも、熱硬化性樹脂でフィルムが作れるのはポリイミド(PI)ぐらいです。それ以外はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)などの熱可塑性樹脂を使ったフィルムです。...