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エポキシ樹脂-汎用エポキシ樹脂の構造

 エポキシ樹脂といえば、まずはビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA: Diglycidylether of bisphenol A: 別名 2,2-bis(4-glycidyloxyphenyl)propane)です。これは業界では汎用エポキシ樹脂といわれ、エポキシ樹脂生産量の半分以上を占めると思われます。

 このような構造をしています。

 

 出典:赤沢茂,“プラスチックマテリアル”, Vol.16, No.2, P.35 (1975)

 

 (  )nは繰り返し単位です。

 この図にあるように、DGEBAは色々な性質を示す骨格を持っています。エポキシ基は反応性ですね。活性水素を持つ化合物であれば必ず反応します。

 エーテル結合 ≡C-O-C≡ と炭素結合 ≡C-C≡ は耐薬品性があり、酸、アルカリには侵されません。

 繰り返し単位内にある二級のアルコール性水酸基は、金属やセラミックスなどの無機物に対する接着性を有します。無機物の表面は、一般に空気中ですぐに酸化されて -M-O-M- や -M=O などの酸化物になっています。この酸素に空気中の水分が水素結合して末端に水酸基が生じます。この水酸基とDGEBAの水酸基が水素結合して、良好な接着性が発現します。水素結合は意外と強く、一般的な共有結合の1/10ほどの結合エネルギーを持ちます。

 アルコール性水酸基の反応性はフェノール性水酸基に比べると弱く、エポキシ基との反応は穏やかな条件では起きません。適切な硬化促進剤を選んだり、高温にしたりすれば、反応して架橋構造(橋掛け構造)を形成します。この水酸基と室温でも反応する官能基としてはイソシアネート基があります。イソシアネートにはたくさんの種類がありますので、うまく使えば架橋構造が室温でも可能になります。

 2個のベンゼン環をプロパンで結合した構造も繰り返し単位に含まれますが、この部分は耐熱性があり、剛直でもあります。プロパンの立体障害でベンゼン環は揺らぎにくくなり、剛直になります。

 一方、ベンゼン環とプロパンの部分以外は、炭素と酸素の単結合なので、柔軟性があります。この部分が脆さのない硬化物ができる要因になっていると考えられます。

 

 市場には、様々な分子量のDGEBAが出回っています。

 出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 32 (2003)

 

 (  )nは繰り返し単位ですが、それがない最も低分子量のDGEBAは、n=0です。この樹脂はDGEBAの中で、唯一、室温で液状です。ですから、汎用液状エポキシ樹脂とも呼ばれます。また、この樹脂だけは分子蒸留によって、純度99%以上の単一の化合物として取り出せます。

 一方、nが1以上の樹脂は固形で、nが大きくなると分子量が高くなり、軟らかくなる温度(軟化点)が高くなります。こちらの樹脂は、n=1、n=2、n=3などの各成分を単独で取り出すことはできません。

 分子量の違いによって、粘度や軟化点以外に、硬化物のガラス転移温度(Tg)、柔軟性などが違ってきます。Tgは分子量が低いほど高くなり、柔軟性は分子量が高いほど向上します。

 

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