常圧溶解法は、アルカリ金属塩触媒と高沸点溶媒を用いて、常圧下、約200℃で、熱硬化性樹脂を解重合して可溶化し、複合材料を構成する各種素材を分離回収する方法です。他のケミカルリサイクル技術と比較した場合の常圧溶解法の大きな特長は、常圧下での処理が可能なことと粉砕等の前処理が不要なことです。これらの特長は適切な触媒と溶媒の組合せを見出して、迅速な分解が可能になったことによるものです。常圧下で処理できることは設備費用が低く抑えられ、しかも連続処理等によって稼動時のコストも低減しやすくなります。また,前処理が不要なことによる利点は、破砕,粉砕の費用を削減できだけではなく、回収材の用途拡大にもつながります。つまり、粉砕した場合には、回収できる繊維は長さ1 mm 以下の短いものですから、強化材としての再利用はできません。さらに、安全衛生の面からは、粉砕による粉塵爆発、塵肺などの危険性を排除できます。
常圧溶解法はガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの複合材料の樹脂を溶かして分離する技術です。そして、分離して回収した素材をまた複合材料に使用することを目的とする技術です。このように使用済み製品から素材を回収して再び同様の製品に使用する方法を水平リサイクルとかクローズドループリサイクルなどといいます。
そして、もうひとつ重要なことは、一番下の一行に書かれていることです。再生加工費と物流費の合計が再生品の価格よりも安くすむということです。言い換えれば、第二次産業である製造業のリサイクルです。製造業は原料を購入して加工し、それを購入者まで送り届けて対価を得ています。それに対して、現在行われている廃棄物処理は大三次産業であるサービス業になります。廃棄物と代金を一緒に引き取って処理するからです。
しかし、現在でも製造業のリサイクルは存在します。その優等生が製紙、鉄鋼などの金属精錬です。これらの業種では古くから使用済みの紙や金属くずを買い取って、それを加工して新しい紙や金属を製造しています。
常圧溶解法は複合材料の製造業によるリサイクルを実現する技術です。
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