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エポキシ樹脂の硬化剤-酸無水物

 次は酸無水物です。フェノール系硬化剤と最も違うのは、液状の化合物もあるので、液状エポキシ樹脂と組み合わせて無溶剤ワニスが作れることです。これによって注型という成形法が使えます。また、含浸法も溶媒を飛ばす必要がないので、工程が簡単になります。注型成形というのは、予め成形型を作っておいて、そこに樹脂を注入してから加熱して硬化させる方法です。

 1998年の統計では、世界で使われている酸無水物の液状と固形の比率は、94:6だそうです。(出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 157 (2003))

 

 エポキシ樹脂の硬化剤として使われる代表的な酸無水物は以下のような化合物です。

 

 出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 158 (2003)

 

 この表の最初のふたつの化合物、THPAとHHPAは室温では固形ですが、適度に温めた液状エポキシ樹脂に溶かして均一にします。

 

 フェノール類を硬化剤としたときは、硬化促進剤としてアミン類やイミダゾール類を使いましたが、酸無水物の場合も硬化促進剤を使うことが多いです。

 

 出典:エポキシ樹脂技術協会編, “総説エポキシ樹脂”, 第1巻, エポキシ樹脂技術協会, p. 257 (2003)

 

 硬化促進剤を使わない場合は、エポキシ樹脂に含まれるアルコール性水酸基や樹脂中の水などが起点となって硬化反応が進行するようですが、硬化促進剤を使ったときは、それが起点になります。硬化促進剤を使わないと硬化させるために150℃以上に加熱しなければなりませんが、硬化促進剤によって硬化温度を下げられます。

 

 フェノール系硬化剤は1個のフェノール性水酸基が反応すると、必ずアルコール性水酸基が生成しましたが、酸無水物の場合は水酸基が生成しません。これによって、金属やセラミクスなどへの接着性はやや低下しますが、誘電特性は低い傾向にあります。

 硬化物のガラス転移温度は、通常150℃~200℃で、耐熱性も良好です。機械的性質もフェノール系硬化剤やアミン系硬化剤に劣ることはありません。熱分解温度も通常320℃以上ありますので、一般的な用途では十分な特性です。