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GFRPリサイクル技術の背景

 初めに、熱硬化性樹脂複合材料の中で、最も多く使われているガラス繊維強化プラスチック (GFRP: Glass Fiber Reinforced Plastics) について、リサイクル技術が開発されるまでの背景を紹介します。

 

 一般に、GFRPといえば、ガラス繊維 (GF: Glass Fiber)で補強された不飽和ポリエステル樹脂 (UP: Unsaturated Polyester Resin) を指します。

 GFで強化されたプラスチックは、他にもガラス繊維強化熱可塑性樹脂 (GFRTP: Glass Fiber Reinforced Thermoplastics)やガラスクロス基材エポキシ樹脂プリント配線板 (PWB: Printed Wiring Board) などがあります。これらも広い意味ではGFRPといえますが、通常はこれらをGFRPとして分類することはありません。

 

 GFとUPを用いたGFRPは1930年代に米国で発明されました。1940年代には主に輸送機器用途に開発されて、小型船舶の船体、自動車本体及び部品、小型飛行機の機体などに使用され始めたました。

 出典:・Carleton Ellis, ”Glycol-maleic acid resin and process of making same”,

     US Patent 2,195,362,Ellis Foster Company (1936)

    ・George Marsh, "50 years of reinforced plastic boats", Materials Today (2006)

      http://www.materialstoday.com/composite-applications/features/50-years-of-

     reinforced-plastic-boats/

 

 日本へは終戦後に初めてその技術が導入されまして、1960年代には、漁船、浄化槽、浴槽、パネルタンクなどが開発されて、1970年代に急速に需要を伸ばしました。

 出典:漁船:土屋孟,”こんなところに複合材料:歴史編-Ⅱ.FRP漁船の開発史”,

       日本複合材料学会誌,vol.29,  no.4, p.129-135 (2003)

    浄化槽:水野雄次,”こんなところに複合材料:歴史編-Ⅲ.FRP浄化槽の開発史”,

       日本複合材料学会誌,vol.29,  no.5, p.165-170 (2003)

    浴槽:小柳卓治,”こんなところに複合材料:歴史編-Ⅳ.FRP浴槽開発史”,

       日本複合材料学会誌,vol.29,  no.6, p.205-209 (2003)

    パネルタンク:西雄二郎,”こんなところに複合材料:歴史編-Ⅴ.FRP製タンクの歴史”

      ,日本複合材料学会誌,vol.30,  no.1, p.3-9 (2004)

 

 これらのGFRP製品は当初から廃棄処理が困難な製品と考えられていました。早くも、1974年には小型船舶工業会においてFRP船廃船処理システム委員会が設けられました。

 出典:竹鼻三雄,林慎也,”FRP船の廃船処理法”,日本複合材料学会誌,

    vol.11,no.6,p.263-267 (1985)

 

 GFRP浴槽は漁船よりも10年ほど後の1980年代に入ってから、廃棄物処理が問題となりはじめました。開発された最初の頃の製品が、耐用年数を迎え始めたからです。1990年になって、やっとGFRP浴槽メーカーが中心となって浴槽製造者責任者会議を設置しました。

 

 GFRPの長所の高強度、耐熱性、難燃性、耐薬品性などが、廃棄処理では逆に短所となってしまいました。そのため、リサイクルはなかなか進まず、廃棄処理の方法を確立するに留まりました。それが、解体→切断→破砕→埋立という工程を経る、減容化して埋立てるという方法です。しかし、1990年代に入ると、この方法では埋立て処分場が不足してしまうという大きな問題が明らかになってきました。そのため、急速にGFRPのリサイクル技術が要求されるようになりました。

 次回から順番に、検討されたGFRPリサイクル技術を紹介します。