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熱硬化性樹脂複合材料のリサイクル技術

 様々なリサイクル技術が開発されていますが、ここでは少し特殊な対象として、熱硬化性樹脂複合材料のリサイクル技術を取り上げます。

 まず、熱硬化性樹脂複合材料が使われている製品の大分類です。

 

 

 GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)は、身近な製品に使われています。一番身近なのはユニットバスでしょう。ユニットバスはほとんどがGFRPで、他の素材としては僅かにホーローとステンレスが使われているだけです。

 それ以外で多くの方がよく目にするGFRP製品としては、電車の内装があります。天井、窓枠がGFRPです。アルミよりも曲線を成形しやすいので、見た目がきれいです。また、アルミよりも熱伝導性が低いので、触っても冷たくないし、エアコンによる結露もありません。新幹線にも通勤電車にも使われています。

 手漕ぎボート、モーターボート、20ton以下の小型漁船もGFRP製です。木材よりも強く、鉄よりも軽くて腐食されません。

 

 CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plasutics:炭素繊維強化プラスチック)は、最近、飛行機に大量に使われるようになり、有名になってきました。スポーツに詳しい人でしたら、CFRPは50年ぐらい前から、いろいろなスポーツ用品に使われてきたことをご存じだと思います。最初は、釣竿、ゴルフクラブのシャフト、テニスラケットに使われました。最近では、釣竿につけるリール、バトミントンラケット、ヨット、カヌー、自転車フレーム、スキー板、スノーボード、ストック、竹刀、アーチェリーなど、非常に多くスポーツ用品に使われています。

 最近では、飛行機に加えて自動車にも使われるようになりました。特に軽量化を図りたい電気自動車に多く使われ始めました。

 土木建築分野では、強アルカリ性のコンクリートでも腐食しないので、老朽化した鉄筋コンクリートの補修に使われています。対象物としては、マンション、道路の橋脚、トンネルの壁、橋の床版などがあります。

 

 主なモールド品は変圧器やモーターです。一般的には、導体である銅線かアルミ線、粉末のシリカやアルミナなどの無機充填材、そして酸無水物硬化エポキシ樹脂からなる複合材料です。エポキシ樹脂は絶縁性が高いので、空気や油で絶縁するよりも、高電圧、高電流に対応できます。電圧、電流が同じであれば、油を使うよりも小型になります。

 

 プリント配線板が複合材料というのは少し意外に思われる方もおられると思いますが、これもれっきとした複合材料で、エポキシ樹脂、ガラス繊維、銅箔が最低限の構成材料で、これに無機充填材、はんだが加わる場合があります。使用済みのプリント配線板はさらに複雑で、搭載されている部品のすべての材料が加わります。例として、シリコン、金、銀、ニッケル、タンタル、カドミウムなどがあります。また、近年は減ってきていますが、難燃剤として臭素を含む場合もあります。

 

 次回は、これらの使用済み複合材料に対して、開発されたリサイクル技術を紹介します。