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エポキシ樹脂の硬化剤-三大硬化剤

 今回は、数あるエポキシ樹脂用硬化剤のうち、私が勝手に三大硬化剤といっているアミン類、酸無水物、フェノール類について説明します。

 まず、これらの硬化剤が、エポキシ樹脂の教科書でどのように取り上げられていたか、みてみます。下のグラフは有名なエポキシ樹脂の教科書の中で、それぞれの硬化剤が説明されているページ数をグラフにしたものです。

 

 出典:・Henry Lee,Kris Neville,”Handbook of Epoxy Resins”,McGraw-Hill,960p (1967)

    ・垣内弘編,”新エポキシ樹脂”,昭晃堂,808p,(1985)

    ・エポキシ樹脂技術協会創立30周年記念出版編集委員会編,”総説エポキシ樹脂 第1巻

      (基礎編1)”,エポキシ樹脂技術協会,316p,(2003)

 

 古い方から、52年前、34年前、16年前になります。

 アミン類(Amine)、酸無水物(Anhydride)は昔から最近まで、たくさんのページが割かれているので、現在でも重要な硬化剤だと推定できます。それに対して、アミド類(Amide)や酸(Acid)は使われなくなってきたと思われます。フェノール類(Phenol)とイミダゾール類(IZ)はそれほどページ数は多くありませんが、昔よりも最近の方がきちんと説明されています。

 特にフェノール類は、”Handbook of Epoxy Resins”では”酸”の項目の中で3ページが割かれているだけですが、”総説エポキシ樹脂”では独立した節が設けられ、11ページにわたって説明されています。これは硬化剤としてフェノールノボラックを使っている半導体封止材の需要の伸びが影響していると考えられます。

 

 次に、三種類の硬化剤の特徴を比較します。

 

 

 これらの硬化剤を比較すると上の表のようになります。アミン類は脂肪族と芳香族ではかなり性質が違うので、ふたつに分けました。

 無溶媒でワニスが作れるのは、脂肪族アミン類と酸無水物です。芳香族アミン類とフェノール類は溶媒に溶かしてワニスを作るか、粉体の状態で使うことになります。

 アミン類はC-N結合を持つので、熱分解温度は低くなります。一方、フェノール類はC-C結合とC-O結合しかないので、分解温度は高くなり、耐薬品性にも優れます。

 吸水率に関しては、硬化物内の親水基の量に比例します。主鎖中の二級のアルコール性水酸基の量はいずれの硬化剤でもほぼ同じです。親水性の高さはC-N(アミノ)結合 > O-C=O(エステル)結合 > C-O(エーテル)結合の順になりますから、吸水率はアミン類 > 酸無水物 > フェノール類になります。

 

 次回は大分類した硬化剤について、個々の化合物の例を挙げながら、説明したいと思います。

 

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